梅が香を 夢の枕に誘ひきて -小笠原明代の新作から

昨日から個展を開催中の小笠原明代さん新作よりのご紹介です。

だいぶ温かくなってきて桜の開花も待たれるこの頃ですが、まだ梅の花も満開です。

 

まだ冷たい空気の中、凛とした花を咲かせ香しい芳香を漂わせる梅は、本当に私たちの心を慰めてくれます。街角を曲がったときに、どこからともなく梅の香りがして、慌てて探すと近くの住宅の庭先に梅の花が咲いていたときなど、思いがけなさと一所懸命な健気さにはっと心を打たれます。

 

 

埼玉生まれ埼玉育ちの小笠原さんは、日本画の支持体として小川町の細川和紙を使います。

揉み紙や墨流し、そして金潜紙(和紙と和紙で金箔をサンドイッチする)の技法を用いながら、細川和紙の風合いを生かして、優しく明るく伸び伸びと埼玉の自然を描きます。

 

この梅の向こうに見えるのは太陽であり、禅画でいうところの円相でもあります。円相は一般的に悟りや真理、宇宙を表現したものですが、小笠原さんは梅の生命力やオーラを表したかったとのことでした。梅の古木の持つエネルギーが感じられます。

 

ー 梅の香を 夢の枕にさそひきて さむる待ちける 春の山風 ー 

源実朝の歌です。

人も自然も明日の命も知れぬからこそ、一瞬一瞬の時を大切に過ごし、季節の移り変わりを愛でたいものですね。