期間: 2012年2月22日(水) 〜 2月28(火)
時間: 10時〜20時 (最終日は17時まで)
場所: 伊勢丹浦和店 7F=プチギャラリー
展覧会に寄せて - テーマ
私は「そこにある」という事が、とても不思議に思います。
私は埼玉県久喜市菖蒲町で生まれ育ちました。埼玉に生まれたのは偶然ですが、今も住んでいるのは私が望んだことでもあります。
いつも見ている風景は当たり前にそこにありますが、広い世界の中ではごくごく一部の狭い風景に過ぎません。住んでいる私には当たり前の日常の風景でも、他の人からすると非日常の風景になるのです。日常のそこにある風景は実は偶然で奇跡的な風景です。
毎日見ている風景も、少しずつ変わっていきます。「あれ、こんなところにこんなものがあっただろうか?」そういう経験は誰にでもあると思います。私はその感覚を大事にしたいと思っています。
いつも通っている道でも、毎日新しい発見を見つけるようにしています。そういえば今日は道の雑草が刈られていました。自転車で通ると枯れ草が服についてちくちくしてちょっと邪魔だな、と思っていました。そんな小さな発見でも見つけると、少し嬉しくなります。昨日とは違う今日にちょっと感動してしまいます。
私は日常の中に佇むものたちをモチーフに絵を描きます。描く事でそれがうつりゆく儚い時間のなかで、確かな存在に変わる気がするのです。日常に感謝するように、愛しむように風景を木版画に映していきます。
DMの作品 「どこにもない部屋」について
DMの作品「どこにもない部屋」はタイトル通り部屋の風景を描いた新作ですが、作中の一部は心象風景になります。花瓶や鳥かご、キャンドルなどは実際に私の部屋にあるものです。
こんなものが置いてあってこんな部屋だったらいいな、こんなインテリアなら素敵なのに、そんな思いも描くことでまるでそこに存在しているかのように作品なります。
存在しているものを描くのと存在していないものを描くのは全く反対のことです。あえて私はどちらも描きたいと思います。なぜなら、不思議な事にどちらも絵の中では存在してしまうのです。それが絵の面白いところだと思うのです。
技術面など・・・そして最後に
私の作品は木版画で制作しています。木版画は絵にするまでに、「下絵→彫る→摺る」という工程があります。版画は版という媒体を通して制作する事で自分の手を離れて、作品になるのです。初めて新しい作品を摺り終えたとき、それは新しい作品との「出会い」です。それは道で小さな発見をした感覚と似ています。新しい作品と出会いたい。それが今の私の制作理由になっています。
今回は地元埼玉の日常風景と、どこにもない風景、旅先の風景などを展示いたします。会場は去年の8月、アールデビュタントでお世話になった伊勢丹浦和店です。まだまだ若手の私にまたこのような機会を与えてくださった皆様に、とても感謝しています。
鈴木ひろみ