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まめちしき31「絵の支持体ってなんですか?」

世界一薄いと言われる高知県の『典具帖紙(てんぐじょうし)』
世界一薄いと言われる高知県の『典具帖紙(てんぐじょうし)』

皆さまが絵を描かれるとき、「何に」描きますか?
子供の頃のスケッチだったら画用紙や、夏だったら団扇に描いたりということもありますよね。アートの世界では、その物資的な基盤のことを「支持体」といいます。英語で言うとsupport (サポート)ですね。絵画本体を支えるものというイメージでしょうか。

油絵でよく用いられているのは、木枠に張られたキャンバスです。
画材店に行くと、既に木枠に張られたキャンバスが沢山売ってます。
それらは定型サイズで作られたものが多いので、既製の額とサイズが合いやすく額装の時も便利です。

実は今日のような綿キャンバスが使われ出したのは、割と最近(19世紀くらい)からと言われています。ヨーロッパの画家たちは、15世紀くらいまでは木の板に描いていました。今でも細密技法の画家のなかには板に描く方たちが沢山います。一般的に板は堅牢だと言われています。木枠に張られたキャンバスと違い、持ち運びによってたわんだり揺れたりし難いためでしょうか。その後、麻を張ったキャンバスを用いる画家が増えてきました。板に比べて軽く、扱いが楽だったためと言われています。そして綿織物の普及に伴って安価で綿キャンバスが作られるようになり今に至ります。

一方日本画の方はと言いますと、古来、襖や杉戸等に描かれた障壁画があります。
また和紙や絹を用いるのも一般的です。和紙には様々な種類があり、画家は自分の描きたいものと和紙の特性を考えてセレクトします。例えば世界一薄い和紙と言われている典具帖紙は、その薄さから向こう側が透けて見えるため、その特性を活かし、金箔を裏から貼ったり下の和紙に絵を描いたりして、繊細な世界を作り出すことができます。

また絹本と言って絹に描くことも一般的です。和紙とはまた違った風合いで描き方も異なります。最近は絹目アートクロスという絹に似た人工支持体も普及しています。

支持体選びは既に制作の第一歩。
皆さまも展覧会に行かれたときは、ぜひ画家さんが選んだ支持体にも注目して鑑賞してみてください。

(ライター晶)